組織の中のアサーション

個人のアサーションとキャリア開発

アサーションの考え方とキャリア開発の考え方は多くの点で共通しています。

自分が目指したい働き方を明らかにしてそれを実現しようとすることが個人のキャリア開発です。どんな仕事をしているに自分はやる気になるのか、何が得意で自分の力を発揮できるのか、働く上で自分が求める価値は何なのか、これらの問いに自分で答えを出していくことで自分自身の理解が深まり目指す姿、働き方が明確になってきます。キャリア開発は働き方に対する自分の意思を明確にしてそれを大切にすることから始まります。キャリア開発もアサーションも自分で自分を大切にする自己尊重の考え方に基づいています。

どのような仕事や働き方をしたときに満足するのかは一人ひとり異なります。同じ仕事をして同じように成果が出ても達成感を感じる人もいれば感じない人もいます。何のために働いているのか、何が満足なのかは一人ひとり異なることです。自分のこれまでのキャリアに満足できるかどうかは自分が決めることで他者が決めることではありません。充実していないときに会社や上司のせいにしても充実感は向上しません。あくまで自分が引き受けることです。キャリア開発は自分の人生に関して自分で決めてその結果を自分で引き受けること、自分の人生を他者にゆだねたり他者のせいにせずに自己責任で生きることです。自己表現の結果を自分で引き受けようとするアサーションと同じ態度です。

個人と組織の関係(個人と組織の共生)

組織の中で自分の意思や考えを大切にして働くためには、組織とどのような関係を築いていくかも重要なテーマです。組織には組織のニーズがあり、個人の意思、ニーズと常に一致しないことも多いものです。お互いに異なるニーズを持つ2者関係はどのようなパターンがあり、どのような関係が求められるのか、個人と組織の関係はアサーションにおける3つの自己表現と同じように分類をすることが出来ます

非主張的表現は自分を二の次にし相手優先を優先する自己表現ですが(自分<相手)、個人と組織の関係では組織優位の関係(個人<組織)の関係といえます。

攻撃的表現は自分を優先して相手を軽視・無視する自己表現ですが(自分>相手)、個人と組織の関係では個人優位の関係(個人>組織)の関係といえます。

アサーションは自分を大切にして相手も大切にする自己表現で(自分=相手)、個人と組織の関係では個人と組織の共生(個人=組織)といえます。

 

表現の種類自分と相手の関係個人と組織の関係
非主張的表現自分は2の次で相手優先

自分<相手

組織優位の関係

個人<組織

攻撃的表現自分優先で相手は軽視・無視

自分>相手

個人優位の関係

個人>組織

アサーション自分を大切に相手も大切に

自分=相手

個人と組織の共生

個人=組織

 

組織と個人の共生関係を可能にする3つの条件があります。相互尊重、相互依存、相互選択です。

相互尊重:個人も組織もお互いに相手を尊重することで、そのためにはまず自分を尊重することからです。自分も相手も大切にするアサーションと全く同じです。

相互依存:お互いに必要としあう、いい意味で利用しあう関係です。組織と個人がいい関係を保つにはお互いに必要としあう状態を保つことも大切です。

相互選択:個人が自分の意思を大切にし、組織も組織のニーズを大切にしながら双方が選択をしあうこと、お互いにある身寄りながら関係を保ことです。お互いの意思、ニーズを大切にしあえば、多くの場合歩み寄れますが、どうしても歩み寄れない場合もある(たとえば「どうしてもこの仕事を続けたい」と希望する個人と「この仕事は組織としては継続しない」と組織が判断した場合など)ことも意識した関係でです。緊張関係が伴う関係です。

組織と個人のニーズが異なることが多い中で共生関係を築いていくにはお互いにわかりあい認め合うことやニーズが異なるときにお互いに歩み寄り納得して結論を出すことが必要です。そのためには個人と組織との間のコミュニケーションが必須です。組織の代弁者である上司と個人(部下)がアサーティブなコミュニケーションを行い、理解しあい異なる点を認め合ってうことで共生関係を築くことが出来ます。

組織と個人の関係は現実には組織優位になりがちです。組織が率先して共生関係を目指した取り組みを行うことで個人を尊重し個人の意思意欲を仕事の成果に活かす組織を目指してもらいたいものです。個人も「うちの会社では、組織優位の考え方が当然だから」とあきらめるのではなく、自分を大切にして粘り強くアサーティブに組織とかかわってもらいたいものです。共生関係やコミュニケーションは相互の努力によって成立するもので、一方のみがやろうとしてもなかなか難しいですが、「相手が変わらないから」とあきらめていては何も変わりません。自分の人生は自分のものです。会社のせいにしていても会社は自分の人生に責任を取ってはくれません。自分を大切にすることは、他人任せや他者のせいにせず、自分がおかれた環境の中で自分が出来ることを自分ですることです。それが自分のことを自分で引き受ける自己責任のアサーティブな生き方であり、キャリア開発の前提の考え方です。

組織のキャリア開発とアサーション

組織のキャリア開発とは、組織で働く人一人ひとりの意思を尊重し、その人らしく成長しその人らしく働くことで組織の成果を高めていこうとする考え方と方法です。

組織はそのために、個人が自分のキャリアを考える研修、ワークショップやキャリアカウンセリング・キャリアコンサルティングなどの支援を行います。また、個人の意思を仕事の成果に活かすために、目標による管理(Management be Objectives and Self-control)の考え方で仕事を進めたり、自己申告や公募制度などによって個人がやりたい仕事につく仕組みを作ったり能力開発の支援を行ったりします。このように組織のキャリア開発支援の方法は、研修など個人の意思決定を支援と、人事制度など制度、仕組みの二つが行われていますが、組織の中でアサーティブなコミュニケーションが行われることもキャリア開発支援の方法として必要です。

組織は人の集団です。組織の中で一人一人の意思の違いが尊重し活かすことは、一人ひとりが自分の意思を表明し表明された意思が受け入れられることから始まります。自分の他者との違いを発信するアサーションと、相手の自分との違いをわかろうとして聴くリスニングが、一人一人の違いを活かすための道具になります。一人ひとりの違いを活かすことは、違いによる葛藤があることを前提にしています。葛藤を避けるのではなく建設的に対応することで一人一人の違いが新たな知恵や創造を生みます。アサーティブなコミュニケーションのスキルは一人一人の違いを積極的に組織の成果に活かす組織の中では必須のスキルです。

 

組織のアサーション

(2018.7追記)
アサーションは個人の自己表現であり、アサーショントレーニングは個人の心的プロセスに関わるものです。ですから心理臨床のプロがトレーナーを行うことが多くなります。
一方で、アサーションは相手があって初めて成立します。ですからアサーションは人間関係の中で行われるものです。また、私たちは一対一の人間関係ではなく、集団や組織の中での人間関係の中で生きています。ですから、自己表現としてのアサーションという視点に加えて、組織や集団としてのアサーションという視点もあってよいのではないかと考えます。
例えばCSRの視点からアサーションの取り組んでいる企業がありますが、これは組織のアサーションの一例と言えるのかもしれません。
リーダーシップのアサーション
チームビルディングのアサーション
組織開発のアサーション
等への寄与が期待されていいると思います。

従来のアサーションに、集団や組織開発の視点を取り入れたこれからのアサーションの姿があるのではないかと考えています。

コメント