聴く会話と会話の3要素

聴く会話とは

「聴く」といっても、ただただ黙って聞いているわけではなく、聴き手も話しての話に反応して言葉を発しています。ここでもそれを「聴く会話」とあらわします。

相手が自分の話を聴こうとしてくれていることがわかると安心して話せます。相手が自分の話にうなずいたりあいづちをうってくれたりすると話はしやすくなります。

しかしそればかりだと自分が一人で話し続けることになり、だんだん話すのが大変になってくるものです。

また、あいづちやうなずきばかりで相手が言葉を発してくれないと本当に自分の話をわかってくれているのかと疑問を持ったり不安になったりします。

会話はキャッチボールだといいますが、自分の発言と相手の発言両方があって成り立ちます。相手の話をわかろうとして聴くためには、耳で聴くだけでなく言葉を発して聴くこと、「聴く会話」を行う必要があります。

相手が自分と異なる感じ方、考え方、気持ちを持っていることを前提にして相手を理解するためには、、相手がどう考え感じているのか確かめないといけません。相手の話を聴く会話とは自分の言いたいことを言うのではなく、相手のいいたいこと、感じていることや気持ちを言葉にして確かめる会話です。

私たちは日常の会話の中では自分の言いたいことを話し、自分の訊きたいことを尋ねたりしていますから、「聴く会話」は日常会話とは異なっています。

端的に違いを整理すると

日常会話:自分のいいたいことを言う
聴く会話:相手の言いたいことを言う(確かめる)

の違いです。

たとえば相手が
「先週末の休日は家族で温泉に行っんだ。いやー、ほんとに楽しかったよ」と言ったときに、

日常会話では「どこの温泉に行ったの」「電車で?それとも車で?」など自分が聞きたい(尋ねたい)ことを聞いたり「うらやましいなあ」「温泉っていいよねえ」など自分の感想を伝えたり、「私は家でごろごろしていたわ」と自分のことについて話したりします。

これらは相手の言った事に対して自分の関心で自分が言いたいことを言っています。このように日常会話では私たちは自分の言いたいことを言っています。相手の話を聴く会話では、相手が何を言いたいのだろうか、どのように感じているのだろうかと相手の考えや気持ちに関心を持って聴きます。相手の心の中はわかりませんからそれを声に出して確かめるのが相手の話を聴く会話です。

相手が「先週末の休日は家族で温泉に行ったんだ。いやー、ほんとに楽しかったよ」と言ったときには
どんなことを自分に伝えたいのかな、今どんな気持ちなのかな、に関心を持って言葉で確かめます。

「温泉に行って楽しかったんだ」など相手の言いたいことを言葉にして相手に伝えます。相手の言いたいことは相手にしかわからないことですから、正確に表現すると「相手の言いたいことを言う」ではなく「相手の言いたいことを確かめる」ことです。

日常会話と聴く会話の違い

聴く会話と日常会話との違いを二つの観点でみてきました。ここで整理しましょう。

[関心の向け方] 私たちの会話には、事実、計画、感情の3つの要素があるが、日常会話では相手の話の事実・計画に関心を向けることが多い。聴く会話では、感情(どのように感じているか、考えているか)に主に関心を向け、3要素を統合して相手の言いたいことを理解しようとする

[何を言うか] 日常会話では自分の言いたいことを言っているが、相手を理解する会話では、相手の言いたいことを言葉にして確かめる。

この二つの観点で各会話を分類すると以下のように分類できます。

 

関心の向け方何を言うか
事実・計画自分の言いたいことを言う問題解決の会話
感情自分の言いたいことを言う同情・同感(励まし・なぐさめ)の会話
感情相手の言いたいことを言う聴く会話

問題解決(の会話)

相手の言っている事実や計画に反応して、自分の意見や考えを言ったり、自分が聞きたい事実を確認する会話です。

「お客様からクレームがありました。残念です。何らかの対策を考えようと思います」という報告は会話の3要素では以下に分けることができます。

事実:お客様からクレームがありました
感情:残念です。
計画:何らかの対策を考えようと思います

事実に反応してする場合があるます。 「どの商品のクレームだ? どんな内容だ? お客様はどんな様子だった?」 などの会話は、事実を詳しく情報収集して自分なりに何らかの判断をし問題解決の方法を探相当する意図があります。

計画に反応して、「どんな対策を考えているんだ?うまくいきそうなのか?」などと詳しくきいたり、提案したりアドバイス、助言などをすることもあります。これらは全て問題解決が目的といってもよい会話です。仕事とは何らかの課題(事実・出来事)とそれに対処することですから仕事のうえで最もよくある会話であり、欠くことのできない会話です。

仕事以外の場面でも、私たちは自分の関心で相手の言っている事実や計画に反応するこの会話を日常よく行っています。

「(事実:「昨日サッカーの試合見たんだけど」)(感情:「楽しかったよ」」
→ 「どのチームの試合?」(事実に反応)
 
「(感情「仕事が自分に合わないんだよ。)(計画:「転職しようと思うんだ」」
→「転職って大変だぞ」(計画に反応) 

同情・同感(の会話)

相手の言っている感情に反応して、自分の思ったこと、感じたことを言います。

事実:お客様からクレームがありました
感情:残念です。
計画:何らかの対策を考えようと思います

に対して、
 
そりゃ、残念なのもわかるよ(同情、同感)
大変だろうけど元気を出して(なぐさめ、はげまし)

などと対応するものです。

辛かったり落ち込んでいるときに人は誰かにわかってもらいたいものですし、そのようなときに同情やなぐさめ、励ましはとても役に立つものです。

「そうだよね」「よくわかるよ」「私もそう思うわ」などのせりふはこの領域です。傾聴とはそういうものだと誤解する人が見受けられますが、この聞き方では「そうだよね」と思える話はよいのですが「そうだよね」と思えない話、すなわち相手と自分の感じ方が違う話を聞くことができません。

タイトルを、同情・同感としましたが、同情・同感できないときに。「私はこう思う」「賛成できない」など反論したり否定することもここに含まれます。

評価(の会話)

良い、悪い、正しい、間違っているなど相手の話を自分なりに評価してそれを伝える会話です。

「それはいいことだね」「よくないね」「間違ってるね」などのせりふに代表されます。これは事実に対しても計画に対しても感情に対しても行われることがあります。

この態度でいると、自分が否定的に思うことについては、話を聴くことが困難になることがあります。

聴く会話(理解する)会話

相手が何を言いたいのか、どのように考えどんな気持ちなのかに注目します。同じ出来事や事実があっても一人ひとり感じ方や気持ちは違うことがある、むしろ違うのが当然であることが前提になっています。

相手の感じていることは自分にはわかりませんから、相手のいいたいこと、気持ちを言葉にして伝えて確かめることになります。ですから

「・・・と思っているんですね・感じているんですね」
「・・・の気持ちなんだね」などの表現が基本的な形になります。

[例1]
「2年連続で自分の営業成績が目標未達成です。今の仕事は自分の適性に合わないと感じるので、転職しようと思います。」
このセリフを会話の3要素に分けると、

事実:2年連続で自分の営業成績が目標未達成です。
感情:今の仕事は自分の適性に合わないと感じるので、
計画:転職しようと思います。

となります。
これに対して、
「そうか、今の仕事が自分の適性にあってないと思うんだね。」
 (相手の言った「今の仕事は自分の適性に合わないと感じるので、」に注目して、その言葉をそのまま使って相手に確かめている。)

[例2]
「昨日ラグビーを見に行きました。とても面白かったので、また見に行きたいです」

これを3要素に分けると

事実 昨日ラグビーを見に行きました。
感情 とても面白かったので、
計画 また見に行きたいです

これに対して、
「楽しかったんだね」
(相手の言った「とても面白かったので」に注目して、自分の言葉で 「楽しかったんだね」と相手に確かめている)

このように、聴く会話の基本パターンは
会話の3要素の“感情”に注目して

① 相手の言った言葉をそのまま使って確かめる(わかったと伝える)
② 自分の言葉で確かめる(わかったと伝える)

の2パターンにわけられます。

実際に行うときには、①か②かを意識して行うのではなく、相手の言いたいこと・気持ち・考えに注目して相手の話を聴き、相手の言いたいことがわかったときに言葉で確かめてみる、それが相手の使った言葉そのものであったり、自分の言葉であったりしてよい、と意識するほうがよいでしょう。

相手の言ったことをそのまま言い返すこと「おうむ返し」といいますが、言葉だけをおうむ返しされることはあまり感じのよいものではありませんし、言葉ばかりに意識が向いていると相手が何を言いたいのかわからなくなることもあります。大切なのは相手の言いたいことをわかろうとして聴くことです。

聴く会話と会話の3要素

相手の話した事実・計画・感情のうち、事実、計画に関心を向けると、問題解決の会話か評価の会話になりがちです。

相手の言いたいことをわかるためには、話の3要素のうちの感情をわかることが必要であり、相手が事実や計画を話していても感情に注目します。

その事実をどのように感じているのか、計画はどのような気持ちや考えに基づいているのかに関心を向けます。

相手の言いたいことをわかるには、感情を中心に話の3要素全体を統合して理解することが必要でなので、事実や計画のみを理解しようとしないことです。

「何々したい」の計画が相手の言いたいことである場合もありますが、計画の動機や理由となっている感情は一人ひとり異なる部分でもありその理解が自他の違いの理解につながります。

互いの考えやしたいこと(計画)が異なりアサーティブな話し合いをしようとするときは、お互いの感情を理解することでどうしてそうしたいのか、計画の背景が理解できます。

お互いに納得できる結論を出すためには計画だけでなく感情を理解することが必要です。

私たちは日常会話では自分の言いたいことを話しています。聴く会話では自分の言いたいことではなく相手の言いたいことを言葉にするので、やってみると最初は慣れなくて不自然に感じます。

しかし自分が不自然に感じるほど相手は不自然には思わないものです。

人は話をしながら相手は自分の話を聞いているのか、わかってくれているのかと疑問に持ちながら話しています。ですからわかっていると伝えることで相手は安心して話してくれるのが自然なことです。

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